企業で人事の仕事をしていると扶養についての相談を受けることが、多々あると思います。

  • 「結婚したので奥さんを扶養に入れてほしい」
  • 「子供が大学を卒業して就職したので、扶養を外してほしい」
  • 「母と同居することになったので、扶養に入れてほしい」

など、状況に応じて様々です。


ここではよくわからないと言われる、奥さん(配偶者)を扶養に入れる場合の解説をしていきます。
昔は「無業の妻は扶養にはいれる」などと言われていましたが、現在は妻に限らず夫であっても配偶者であれば扶養に入れることは可能です。そして健康保険の扶養に入るだけではなく、奥さんの年金についても影響があります。このページで健康保険と国民年金第3号被保険者について覚えていただき、実務に生かしてください。

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国民年金第3号被保険者とは

国民年金第3号被保険者とは、国民年金第2号被保険者の扶養に入る配偶者を言います。
こう言っても分かりづらいと思いますので、まず国民年金について簡単に説明します。

《参考》日本年金機構-国民年金第2号被保険者が、配偶者を扶養にするときの手続き

20歳から60歳までの方は全て下のいずれかの国民年金に加入しています。

国民年金第1号被保険者自営業者や無職の方
国民年金第2号被保険者会社員や公務員など、被用者年金に加入している方
国民年金第3号被保険者国民年金第2号被保険者に扶養される配偶者


少し説明すると、国民年金第2号被保険者とは被用者年金に加入している方を言います。被用者年金とは、会社に勤めることにより加入している年金ですから、厚生年金保険に加入している方ということができます。
こちらのページでも説明しましたように、厚生年金保険に加入しているのであれば、健康保険は協会けんぽの健康保険(場合によっては健康保険組合)に加入しているということになりますので、その配偶者は国民年金第3号被保険者であり、健康保険の扶養ということができます。
《参考》
厚生年金保険と健康保険加入の基礎の基礎について学ぶ!

繰り返しになりますが、「健康保険の扶養に入っている配偶者は国民年金第3号被保険者である」という点について押さえてください。

国民年金第3号被保険者の国民年金保険料はどうなるのか?

健康保険では、扶養に入っている家族が何人いても健康保険料は変わりません。
それが市町村役場で扱っている国民健康保険との大きな違いでした。

それでは健康保険の扶養者である配偶者の国民年金の保険料はいくらかかるのでしょうか?
答えは「かからない」です。
扶養に入っている配偶者の年金保険料は、厚生年金保険を掛けてくれている会社を通して払っていると勘違いしている方がいらっしゃいます。しかし、実際には国民年金については保険料が発生しないのです。

ここでは「健康保険の扶養に入っている配偶者については、国民年金の保険料が発生しない」という点について押さえてください。

国民年金第3号被保険者の期間があれば年金の金額は減ってしまうのか?

前の項目では国民年金第3号被保険者については国民年金保険料は発生しないことを説明しました。
ここで気になるのが、将来もらえる年金についてです。

国民年金第3号被保険者として保険料を支払っていない期間があった場合には、将来もらえる年金の金額は減ってしまうのではと心配する方もいらっしゃいますが、この場合には減らずにもらえます。国民年金第3号被保険者の期間については国民年金の保険料は納付済みの扱いになるのです。
繰り返しになりますが、「国民年金第3号被保険者については保険料を支払わなくても良いが、将来の年金には納付済みとして扱われること」を押さえてください。

健康保険の扶養の確認

健康保険の扶養の確認は、全国健康保険協会で毎年春に行われます。
《参考》全国健康保険協会-事業主・加入者のみなさまへ「被扶養者資格の再確認について(平成29年度の実施)」


ここまで健康保険の扶養と国民年金第3号被保険者の制度について説明しましたが、健康保険の扶養に入ることは国民年金第3号にも該当することになり、保険料支払いの面で大変お得であることがお分かりいただけると思います。お得な分だけ該当しないことが後から判明した場合のショックが大きくなります。

全国健康保険協会の確認で扶養に該当しないことが判明した場合には

該当しなくなった時にさかのぼって扶養から抜けることになりますので、国民健康保険や国民年金の保険料が発生することになります。
そうなるとその従業員の家計にも大きな影響が出てしまうため、人事担当者としては扶養から抜けた場合にはすぐに連絡することをルール化し、手続き漏れがないようにしなければなりません。

まとめ
ここでは健康保険の扶養と国民年金第3号被保険者についてまとめました。
扶養については従業員からの質問が多い部分ですから、人事担当者としては基本的な部分について押さえておきたいところです。扶養に該当するかどうかわからない場合には、全国健康保険協会の確認が来る前に社会保険労務士に確認してみることをお勧めします。