雇用契約書は会社が従業員と交わす対個人の契約書です。
会社は契約をした労働条件を守らなければなりませんし、従業員もその契約書に反することなく労働を提供しなければなりません。
しかし会社には対個人の雇用契約書だけではなく、就業規則という会社全体のルールを定めているものもあります。

もしもこの就業規則が雇用契約書の内容と重複していて、矛盾するような内容になっている場合には、どちらが優先されることになるのでしょうか。
このページでは雇用契約書と就業規則の関係について説明していきます。

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雇用契約書と就業規則ではどちらが優先されるのか?

この答えを考えるには、最初に就業規則とは何かについて説明をする必要があります。

就業規則とは

就業規則(しゅうぎょうきそく)とは、労働者の就業上遵守すべき規律及び労働条件に関する具体的細目について労働基準法に基づいて定められた規則のことをいう。
Wikipediaより引用

就業規則とはその会社で働く従業員が守らなければならないルールが載っています。
社会保険労務士の中には就業規則を「会社の憲法」と例える方もいます。
それはその会社の社長が全従業員に当てたメッセージでもあり、規律でもあることを意味しているのです。

雇用契約書と就業規則はどちらが優先されるのか?

ここからがこのページの本題です。
上で就業規則とは何かについて説明しましたが、それでは雇用契約書とはどちらが優先されるのでしょうか。

個別に労働者と契約を結んでいるので雇用契約書の方が優先されるように思われるかもしれませんが、実際は就業規則の方が優先されます。
もしも雇用契約書と就業規則の範囲が重複している場合には雇用契約書の契約内容ではなく、就業規則の内容で契約したものとみなされてしまうのです。

ではどのような場合に雇用契約書と就業規則の内容が重複してしまうのでしょうか?
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雇用契約書と就業規則の内容が重複する場合

雇用契約書と就業規則の内容が重複するなんて不思議に思うかもしれませんが、実は十分にあり得るのです。
よく見かけるケースは昔作った就業規則がそのまま残ってしまっている場合です。

就業規則は一度作成すると労働基準監督署に提出しなければなりません。
その届出をしてそのまま保管をし続けて、何年も経過してしまった場合が考えられます。

既に存在すら忘れられていた就業規則でも、一部の従業員の中に存在を知っている方もいるかもしれません。
そのような従業員が退職する際に「就業規則に退職金の規定があった」と言われれば、個別の雇用契約書では退職金の支払いがないことを書いていたとしても、就業規則が生かされることがあります。

補足

就業規則に有効期限はありません。仮に10年前に作成し、そのまま修正していなかったとしても就業規則は無効になりません。

まずは自社に就業規則があるか確認すること


このようなことがないように最初に雇用契約書の存在を確認することが大切です。
作った記憶がない場合でも、開業に携わったコンサルタントが作成していたり、会社の担当税理士が就業規則のひな形を持ってきて会社名だけ変えて提出している可能性もあります。

このような場合でも就業規則が生きてきてしまう可能性があります。
ですからまずは就業規則の有無を確認して下さい。
そして見つけたら内容を確認して、現在の労働条件と合致しているのか確認してください。
従業員とのトラブルに繋がりますので、古い就業規則の放置は大変危険です。

まとめ

雇用契約書と就業規則の内容が重複している場合には就業規則が優先されてしまいます。
個別の雇用契約を有効なものにするためにも、従業員とのトラブルを防止する観点からも、就業規則の見直しと雇用契約書の内容の確認は同時並行して行っていくことが大切です。