ある時、早退した従業員から社長のもとに電話がありました。
「病院の先生から、1か月安静するように言われたので、休職させてください」
社長は急な話に驚きましたが、「わかりました。お大事にしてください」とだけ伝えました。

この社長は自分の会社に休職制度を作るとか作らないとか、考えたことがありませんでした。それなのに休職が欲しいという話に「分かった」と答えてしまったのです。

このお話では従業員は休職は従業員の権利として当然があるものと思って、休職をしたいと申し出ました。
一方社長は休職をあげなければならないのか、あげる必要がないのかわからないまま、休職を認めました。

はたして社長は従業員に休職を与えなければならなかったのでしょうか?

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休職について考える前にまず雇用契約の定義について考える

休職について考える前に、「雇用契約」についてまず考えてみましょう。
雇用契約とは労働者が労務を提供し、それに対して使用者が賃金を支払うことにより成立します。

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したがって労働者が労務を提供できない=雇用契約が切れる
ということになりますので、私傷病により労務を提供できない場合には、解雇の事由に該当するものと考えられます。

休職制度の意味とは

上の説明をそのまま適用させると、私傷病で働くことができなくなった従業員については、解雇することになります。
しかし、会社はその従業員が一人前になるまでに、お金も時間もかけて教育をしてきたので、もし病気が治ったならまた働いてほしいと考えています。
そして従業員もせっかく仕事を覚えたし、病気が治ったならまた職場に復帰したいと考えています。

それであれば、労務の提供はできませんが、ある程度の期間、会社に籍を残したまま治療に専念させてあげる。
それが休職の制度なのです。

休職制度は法律で決められているのか?

休職の制度は多くの会社で採用されていますが、労働基準法で決められた制度ではありません。
したがって休職の制度がない会社もありますし、ある会社もあります。
休職の制度がないからといって法律違反ではありません。

社長は休職を与えなければならなかったのか?

さて、はじめに挙げた例について考えてみたいと思います。
社長は休職をとらせてあげることにしましたが、実際にはどのように考えるべきだったのでしょうか?

就業規則に休職の制度がある場合

この会社に就業規則があり、休職の規定がある場合には、就業規則に記載されているとおり、休職を与える必要があります。
もしも休職は3か月となっていれば3か月、1年6か月となっていれば1年6か月まで休職を与えてあげる必要があるのです。

就業規則に休職の制度がない場合

休職の規程がないからといって休職を与えずに、すぐに解雇することができるわけではありません。
解雇をする場合には、合理的で客観的な理由がなければ、解雇が有効になりません。
復帰の可能性や業務への影響、配置転換をすることで対応することができないか、などを検討し、解雇理由が合理的で客観的に認められる場合に、解雇が相当であるとされます。

大事なことなので重ねて言いますが、休職制度がない場合であっても、従業員を解雇することができるわけではありません。
会社は休職制度を設けるかどうかあらかじめ検討し、設けるのであればどれくらいの期間を認めるのかまで考えておく必要があります。
そして従業員が安心して働けるように、就業規則に載せておくことをお勧めします。

まとめ
休職制度は法律で定められた制度ではありません。したがって休職制度を設けないからといって違法ではありません。
しかし従業員が病気になった場合にどのように対応するかは、会社としてはあらかじめ決めておくべき内容であると言えます。
もし急に従業員が病気で休まざるを得なくなったら・・・不測の事態に備えるためにも、休職制度を就業規則に盛り込むことも踏まえて一度検討してみてはいかがでしょうか。