御社には「皆勤手当」がありますか?
皆勤した従業員へのご褒美というより、欠勤や遅刻をなくすための手段として導入している会社もあるかと思います。

皆勤手当というぐらいですから、欠勤したら支給されないでしょうが、有給休暇を取得した場合の取り扱いはどうでしょうか。
有給休暇を取得した場合にも支給しない、または減額するという取り扱いは、違法となる可能性があります。

最初に労働基準監督署の見解から確認していきます。

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労働基準監督署の見解

労働基準監督署の見解としては、違法としています。

Q8.年次有給休暇を取得すると、皆勤手当がもらえなくなります。こんなことは許されるのですか?
A8.結論から申し上げれば、皆勤手当は支給されなければなりません。
労働基準法附則第136条では、「使用者は有給休暇を取得した労働者に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならない。」と定め、「精皆勤手当及び賞与の額の算定等に際して、年次有給休暇を取得した日を欠勤として、又は欠勤に準じて取り扱うことその他労働基準法上労働者の権利と して認められている年次有給休暇の取得を抑制するすべての不利益な取扱いはしないようにしなければならないものであること」としています。
《引用》大阪労働局HP

有給休暇を取得した従業員に対し、賃金の減額などの不利益な取り扱いをしてはいけません。さらに、皆勤手当や賞与の評価において、有給休暇を欠勤に準じて扱ってはいけないとされています。有給休暇の取得を妨げる行為となるからです。

判例はケースバイケース

一方、判例では違法としたもの、違法とまではいえないとしたものとがあります。

判断のポイントは以下の3点です。

  1. 皆勤手当の目的
  2. 従業員がこうむる不利益の大きさ
  3. 有給休暇の取得を妨げるかどうか

皆勤手当が頑張っている従業員へのご褒美あるいは欠勤や遅刻をなくすための手段であり、有給休暇の取得を抑止するためのものではないことが重要です。
そして、皆勤手当の額が少ないのであれば不支給または減額しても従業員の不利益が小さいと考えられます。皆勤手当が少なくなると困るから有給休暇の取得を諦める、ということにはならないでしょうから、違法とまではいえないということになります。

以上の3点が認められれば、皆勤手当の不支給または減額も認められる可能性があります。

有給休暇の取得を理由に不利益な取扱いをしない

賞与で評価する

判例によるとケースバイケースで、皆勤手当の減額が認められる場合もあるようですが、皆勤手当の不支給または減額を行うのは、リスクが高いといえます。
裁判で勝てるとしても、裁判には費用も時間もかかります。
有給休暇の取得は労働者に認められた権利ですから、取得することにより労働者が不利益を被る方法は避けるべきでしょう。

平成31年4月からは、年に10日以上年次有給休暇が付与される労働者には、年5日使用者が時季を指定して取得する制度が始まります。
有給休暇を取得しやすい環境を整え、労働者のモチベーションの高い職場づくりを心掛けるほうが有意義だと言えます。