もし従業員が病気により長期の欠勤をしなければならなくなったら、あなたは何を考えますか?
業務の引継ぎや給料の支払いなどについて、考えなければならないことが多々あることは容易に想像できるでしょう。
従業員の病気欠勤は予測できるものではありませんし、ある日突然やってくるものです。
したがって会社としては、その時が来る前に準備しておく必要があります。
あなたの会社では
- 病気欠勤の場合に休職の制度はありますか?
- 休職期間について就業規則で定められていますか?
- 休職の場合の給料を支払わないことを明記していますか?
上の質問について答えられなければ、これから解説する休職のルールをお読みいただき、ご確認いただければと思います。
そしてまだ就業規則がなく、休職の規定がないのであれば、不測の事態に備えて休職の制度を整備してみてはいかがでしょうか?
休職の制度とメンタルヘルス不調による病気欠勤への対応
近年はメンタルヘルス不調者の増加により、休職する従業員が増えてきています。
次のグラフをご覧ください。
上記のグラフを見ていただければわかるように、10%の事業所がメンタルヘルス不調による連続1か月以上の休業や退職を経験しています。
この数字は決して少ないとは言えないのではないでしょうか?
休職制度の準備はどの会社でも早急に対処しなければならない問題になっていると言えるでしょう。
休職の制度は労働法で決められているわけではない
休職は労働法で定義された制度ではありません。
ですから会社は、就業規則を作ったとしても休職の制度を導入しても、導入しなくてもどちらでも構わないことになります。
せっかく仕事を覚えてもらった従業員ですから、長期欠勤が必要になったとしても会社に籍を残して復帰を待つということであれば休職の制度を設けたほうが良いと思います。
従業員には仕事を覚えてもらったが、工場や流れ作業の必要性からどうしてもすぐに人工が必要であるため、休職の制度を設けることが難しいのであれば、休職の制度を設けないことも可能です。
休職制度を設けるか、設けないかはその会社の事情により異なります。
状況を把握し、設けるか設けないか決めてください。
休職制度がない会社の場合
もし休職制度がない場合に従業員が病気になり、長期間にわたり労働を提供できない場合には労働契約の終了し、解雇するいうことになります。
しかし休職の制度がないからといって直ちに解雇できるわけではないことには注意が必要です。
従業員を解雇するのであれば、その解雇に客観的に合理的理由があることが必要なのです。
病気の従業員を解雇する場合に確認しなければならない項目
- 業務への影響の程度
- 回復の見込みの有無
- 配転等の可能性
以上の項目を総合的に判断し、解雇が客観的に合理的な理由がある場合にのみ解雇を行うことができるのです。
解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、解雇権を濫用したものと判断され、解雇が無効となります。
病気で欠勤が必要なら直ちに解雇できるわけではありませんので、十分に注意してください。
休職の制度がある会社の場合
逆に休職の制度がある場合には、一定の期間まで退職を猶予することになります。
就業規則で休職をする場合の期間について定めておきます。
第〇条 (休職)
1 労働者が、次のいずれかに該当するときは、所定の期間休職とする。
①業務外の傷病による欠勤が か月を超え、なお療養を継続する必要があるため勤務できないとき
②前号のほか、特別な事情があり休職させることが適当と認められるとき
必要な期間
2 休職期間中に休職事由が消滅したときは、原則として元の職務に復帰させる。ただし、元の職務に復帰させることが困難又は不適当な場合には、他の職務に就かせることがある。
3 第1項第1号により休職し、休職期間が満了してもなお傷病が治癒せず就業が困難な場合は、休職期間の満了をもって退職とする。
このように規定し、あらかじめ休職できる期間を決めておくのです。
もしもこの期間が経過しても病気が治らず、復職できない場合には退職するという取扱いになります。
この休職期間は会社に籍がある期間ですから、社会保険の保険料は発生します。
そのため休職期間で全く出勤がなく、給料の支払いがない場合であっても、会社の口座に振り込んでもらうなどの方法により従業員負担分は従業員に負担してもらうことになります。
休職についてのまとめ
休職について抑えておきたいルールは以上になります。
冒頭でも説明しましたが、従業員の病気欠勤はいつおこるかわかりません。
かといって何も対策をとらないという訳にはいかないのではないでしょうか?
これを機に病気欠勤時の対処法について考えていただき、いざという時に備えておくことが、従業員から信頼される労務管理につながるものと思います。