労働契約は労働者と使用者の合意により決まります。
ですから給料や労働時間についても基本的には労働者と使用者の合意によって決まるのが原則です。
しかしこの原則に従って自由に労働条件を決めて労働契約を結ぶことができる、とすると労働者に不利な条件で労働契約を結ぶことになります。
労働者は労働力を提供する(使用者に雇ってもらう)ことでしか生計を立てることができないからです。
例えば、労働者がもっと給料を上げてほしいと会社に申し出たらどうでしょうか?
使用者(会社)は「それなら他の従業員を雇うから無理してうちの会社で働く必要ない」と言うでしょう。
それが労働者と使用者の立場の違いです。
労働者と使用者では立場が違うため、自由に労働契約を結んでよいとすると、労働者が不利な条件で労働契約が結ばれることになります。
それを回避するために労働契約法や労働基準法があります。
逆に使用者(会社)の立場から考えると、労働契約法や労働基準法を守りつつ労働契約を結ばなければならないということになります。
このページでは労働契約法の基本的なルールや考え方について説明していきます。
目的は「労働者の保護を図りつつ個別の労働関係の安定を図ること」
労働契約法の第1条では労働契約法の目的について次のように書かれています。
労働契約法第1条
この法律は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする。
上の条文を見ていただくとわかるように労働契約法は労働契に関する基本的な事項を定めることにより労働者の保護を図り、労働関係を安定させることが目的であると記載されています。
冒頭でも説明したように労働契約法は労働基準法と共に、労働者を保護する法律です。
使用者(会社)は労働者保護の観点から労働契約法にしたがって労働者と労働契約を結ぶ必要があるのです。
では労働契約法は労働者のためだけに存在するのか?
それでは労働契約法は労働者のためだけにあるのでしょうか?
それは違います。
労働契約は使用者(会社)が労働者に対してルールを守るだけではなく、労働者も使用者(会社)に対してルールを守らなければなりません。
労働契約が「契約」である以上、労働者も労働契約を守らなければなりません。
労務トラブルが発生する大きな原因の一つに「言った、言わない」の問題があります。
使用者側は「こう言った」と言い、労働者側は「そんなことは聞いていない」ということです。
労務トラブル以外のトラブルについても共通することですが、トラブルの原因は双方の認識の違いやズレであることが多々あります。
労働契約法の目的はこのような認識の違いやズレをがなくなるように、労働契約のルールを整備することでもあるのです。
労働契約の原則とは何か?
労働契約法では労働契約に関する原則を次のようにまとめています。
これが労働契約法の基本的な理念とされています。
労働契約法第3条
1 労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものとする。
2 労働契約は、労働者及び使用者が、就業の実態に応じて、均衡を考慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
3 労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
4 労働者及び使用者は、労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に、権利を行使し、及び義務を履行しなければならない。
5 労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない。
これらはそれぞれ、「労使対等の原則」「均衡考慮の原則」「仕事と生活の調和への配慮の原則」「信義誠実の原則」「権利濫用の禁止の原則」といいます。
これから次ページ以降、労働契約法の内容について説明をしていきますが、これらの原則が基本になっていますので、説明の都度見返してみてください。
まとめ
- 労働契約法は労働契約の基本事項を定めることで、労働者の保護や労働者の立場を安定させることを目的に作られた法律である。
- 労働契約法は労働契約のルールを定めることで、労務トラブルを防止することにもつながる。