現在試用期間中のX君の勤務態度があまり良くないと社長は思っているようです。
そこで社長は顧問社労士に、X君の試用期間終了後、本採用を見送ろうかと相談しています。


[speech_bubble type=”fb-flat” subtype=”L1″ icon=”r2.png” name=”A社長”]この間先生に入社手続きしてもらったX君なんだけどね、試用期間が終わったら辞めてもらおうかと思ってるんだよ。[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”fb-flat” subtype=”R1″ icon=”s2.png” name=”社労士”]何かあったんですか?[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”fb-flat” subtype=”L1″ icon=”r2.png” name=”A社長”]うちには合わないんだよ。試用期間でダメだって分かったら、本採用しなくてもいいんだよね?[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”fb-flat” subtype=”R1″ icon=”s2.png” name=”社労士”]ちょっと待ってください。まず、試用期間について誤解されているようなので確認させていただきますが、試用期間と言っても、解約権が留保されているだけで、雇用契約が正式に成立しています。本採用しないということは、解雇と同じなんです。[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”fb-flat” subtype=”L1″ icon=”r5.png” name=”A社長”]解雇になるの!?[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”fb-flat” subtype=”R1″ icon=”s2.png” name=”社労士”]そうなんです。ですから、解雇の手続きを踏まないといけないんです。まず、うちに合わないと考えた理由を教えて下さい。[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”fb-flat” subtype=”L1″ icon=”r2.png” name=”A社長”]覚えが悪くて、教育係に何度注意されてもちっとも直せないんだよ。おまけに、遅刻もよくするし。[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”fb-flat” subtype=”R1″ icon=”s2.png” name=”社労士”]勤務態度が悪い、ということですね。それだけですと、ちょっと理由としては弱いですね。[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”fb-flat” subtype=”L1″ icon=”r2.png” name=”A社長”]じゃあ、どんな理由なら認められるの?[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”fb-flat” subtype=”R1″ icon=”s2.png” name=”社労士”]基本的には就業規則の解雇事由と同じですよ。今いる従業員さんに問題が生じた場合に解雇できるかどうか判断する時と同じように考えて下さい。[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”fb-flat” subtype=”L1″ icon=”r5.png” name=”A社長”]でも、試用期間って、様子をみる期間じゃないの?[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”fb-flat” subtype=”R1″ icon=”s2.png” name=”社労士”]確かに、普通の解雇よりは本採用拒否の方が、要件が緩やかに判断されるという説もあります。ですが、本採用拒否も解雇とみなされる以上は、慎重に行う必要があります。[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”fb-flat” subtype=”L1″ icon=”r4.png” name=”A社長”]X君の場合は、どうしたらいいかな?[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”fb-flat” subtype=”R1″ icon=”s2.png” name=”社労士”]まずは、教育係さんがどのような指導をしたのか、よく聞き取りをして下さい。通常の解雇でも、能力不足が認められる可能性は低いのです。なぜなら、会社には指導教育する義務があるからです。とりわけ、試用期間は入社すぐの未経験者であることから、より指導不足を問われることになります。[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”fb-flat” subtype=”L1″ icon=”r2.png” name=”A社長”]見ていた上司にも聞いてみたけど、丁寧に教えていたそうだよ。でも注意するとすぐにふてくされちゃって、なかなか聞いてくれなかったらしい。[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”fb-flat” subtype=”R1″ icon=”s2.png” name=”社労士”]その経過はノートか何かに書いてありますか?[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”fb-flat” subtype=”L1″ icon=”r2.png” name=”A社長”]ちゃんと指導記録はとってあるよ。[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”fb-flat” subtype=”R1″ icon=”s2.png” name=”社労士”]それなら証拠になりますね。あと、遅刻が多かったそうですが、そちらについても指導はされていましたか?[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”fb-flat” subtype=”L1″ icon=”r2.png” name=”A社長”]もちろん。教育係だけじゃなく、私も何度も注意しましたよ。[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”fb-flat” subtype=”R1″ icon=”s2.png” name=”社労士”]それでも直らなかった、ということですから、認められる可能性がありますね。[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”fb-flat” subtype=”L1″ icon=”r2.png” name=”A社長”]そうか。試用期間って言っても、簡単には辞めさせられないんだね…試用期間が終了してやむを得ず辞めてもらう場合であっても、教育が必要だとわかったよ。[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”fb-flat” subtype=”R1″ icon=”s2.png” name=”社労士”]それから本人に通知する際には、30日以上前に伝えるか、解雇予告手当を支払って下さいね。[/speech_bubble]
[speech_bubble type=”fb-flat” subtype=”L1″ icon=”r2.png” name=”A社長”]30日前だね。残念だけどX君に本採用をしないことを伝えるよ。どうもありがとう。[/speech_bubble]

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試用期間とは

「試用期間は正社員として働いていけるかどうか判断するためにあるから、試用期間終了後に本採用にするか採用しないかは、会社が自由に決められる」
経営者の中にはそのように考えている方が、少なくありません。

しかし試用期間だからといって、終了後に採用するかどうかを自由に決められるものではありません。
もしも試用期間終了と同時に辞めてもらうのであれば、解雇と同様のルールが用いられることになります。

試用期間とは解約権を留保した雇用契約といわれています。
したがって採用後14日を経過した後の本採用拒否であれば、解雇予告のルールが必要ですし、その本採用拒否(=解雇)の理由に客観的合理的理由や社会通念上の相当性が認められなければ、解雇権の濫用になるのです。

本採用拒否を行う場合に注意しなければならないこと

社長と社労士のやり取りで見ていただいたように、本採用拒否を行うにはその客観的合理的理由や社会通念上の相当性が認められる必要があります。
たとえ能力に不足があると感じたとしても、従業員を教育することなしに解雇をすることは社会通念上相当であるとは言えないでしょう。

「会社の戦力として活躍してもらうために、一生懸命教育をすること」
会社はたとえ能力に不足があると感じていたとしても、それを目指して一生懸命教育する必要があることを認識しておくことが必要です。