法人の役員をされている方の中には、2つ以上法人の役員をしている方がいます。A社では代表取締役でありB社では取締役をしている、というような場合です。このような場合には、健康保険や厚生年金保険をどちらの事業所でかけなければならないか迷うことがあると思います。

法人の役員の健康保険や厚生年金保険の加入については、考え方が難しく、加入方法について勘違いしている方も多くいらっしゃいます。勘違いが後に健康保険や厚生年金保険の加入時期に影響を及ぼす恐れがありますので、このページで確認してください。

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法人の役員の健康保険や厚生年金保険の加入条件

一般的には健康保険や厚生年金保険は、「正社員の4分の3以上の労働時間や勤務日数」を満たせば加入しなければならないといわれています。しかしこれは従業員の社会保険の加入の条件です。法人の役員については勤務時間や勤務日数ではない、別の加入の条件があります。

《参考》
厚生年金保険と健康保険加入の基礎の基礎について学ぶ!
厚生年金の違法な未加入について年金機構が調査開始!加入条件の見直しを

法人の役員の加入条件とは

法人の役員については「法人に使用される者」であるため、報酬が発生していれば健康保険や厚生年金保険に加入することが基本です。しかし、すべての法人の役員が健康保険や厚生年金保険に加入できるわけではありません。よく非常勤役員であれば健康保険や厚生年金保険に加入しなくても良いといわれますが、実際には非常勤役員だからという理由だけでは加入条件から外れるわけではありません。


一概にいうことはできずケースバイケースではあるのですが、日本年金機構の職員の方は次のような状況を確認し、健康保険や厚生年金保険の加入をしなければならないか否か判断していると言われています。

健康保険や厚生年金保険に加入しなければならない役員かどうかの判断基準

  1. 報酬を支払っているが、常勤ではない
  2. 報酬が極度に低い
  3. 経営に携わっていない
  4. 法人に定期的にかかわっていない
  5. 他の業務を兼務しているか
  6. 役員会に出席しているか
  7. 従業員に対して指示をしたり、連絡をしたりするか
  8. 経営に対して意見を述べる機会があるか
  9. 報酬が実費弁償程度ではないか

年金事務所ではこれらを総合的に判断して、健康保険や厚生年金保険に加入するべきかどうか判断しています。非常勤役員だから加入しなくてもよいと思っていると、実際に社会保険総合調査で加入するよう指摘を受けることになりかねません。

社会保険総合調査で加入するように指摘された場合

社会保険に加入するよう指摘された場合、本来加入しなければならない時期にさかのぼって加入するよう指示されることがあります。そうなると相当多額の社会保険料を支払う必要が生じますので、もし加入していないのであれば早期の対策が必要です。

(2)資格取得届の提出が必要な方について、届出が提出されていないことが後で分かった場合、
 (ア)遡って資格取得届を提出していただくとともに、
 (イ)事実が発生したときに遡って保険料をお支払いいただく
ことになります。
《引用》日本年金機構-従業員を採用した時の手続き

複数の法人で加入条件が当てはまる場合には、どのように加入すればよいのか?

2社以上の法人で加入条件に当てはまる場合には、それぞれの事業所で健康保険・厚生年金保険資格取得届を提出します。どちらの法人でも加入の条件に当てはまるのであれば、両方の法人で資格取得の手続きをしなければならないのです。
そのうえで「健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届」を年金事務所に提出します。

《参考》複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き

これは複数の事業所で健康保険や厚生年金保険加入することになった場合に、どの事業所を主たる事業所にするか決定するために提出する書類です。ここで選択した事業所を管轄する年金事務所の適用事業所として、健康保険証が発行されることになります。

保険料についてはどうなるのか?

健康保険や厚生年金保険の保険料は、それぞれの法人の報酬を合算した金額を元に、標準報酬月額が決定されます。そのうえで、事業所ごとに支払っている報酬額で按分した金額を毎月月末に社会保険料として、選択事業所を管轄する年金事務所に支払うことになります。

まとめ
法人の役員については健康保険と厚生年金保険を複数の法人で加入しなければならない場合があります。その点について、一般の従業員とは異なります。法人の役員の加入条件については、従業員と違い一概に加入か非加入かの判断が難しいため、年金事務所の調査で加入しなければならないことに気が付く会社もあります。加入しなければならないのか不明な場合には、年金事務所に直接お問い合わせをいただくか社会保険労務士に相談してみることをお勧めします。