人事の仕事を担当していると、従業員から健康保険の扶養に加入させられるかどうか質問されることが多々あります。
従業員にとっては家族を健康保険の扶養に入れられるかどうかで支払う保険料が違ってくるため、非常に関心が高いです。
実際に健康保険の扶養に入ることができるかどうか審査を行うのは日本年金機構や健康保険組合なのですが、事前にある程度条件が分かれば従業員からの質問への対応もスムーズに行うことができます。
このページでは健康保険の扶養に入るための条件について説明します。健康保険の扶養に入るための目安を知ることがまず第一です。
健康保険の扶養に入るための条件
健康保険の扶養に入れるためには、被保険者との関係と収入面の2つの条件をクリアすることが条件になります。
被保険者との関係
1.被保険者と同居している必要がない方
- 配偶者
- 子、孫および弟妹
- 父母、祖父母などの直系尊属
2.被保険者と同居していることが必要な者
- 上記1.以外の3親等内の親族(兄姉、伯叔父母、甥姪とその配偶者など)
- 内縁関係の配偶者の父母および子(当該配偶者の死後、引き続き同居する場合を含む)
文字で説明すると上記のようになりますが、イメージがしにくいと思いますので、図を載せておきます。
収入面の要件
- 年間収入130万円未満かつ
- 同居の場合 収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満
- 別居の場合 収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満
ただし、被扶養者が60歳以上又は障害者の場合は、年間収入が130万円未満ではなく、180万円未満となります。
この被保険者との関係と収入面の両方の条件を満たすときに「健康保険被扶養者(異動)届」を提出することで、扶養に入れることができるのです。
《参考》健康保険の扶養と国民年金第3号被保険者について押さえるべき3つのこと
75歳以上になると後期高齢者医療制度に加入
75歳になると一部の方を除き、基本的には後期高齢者医療制度に加入することになります。
それまで健康保険や市町村の国民健康保険に加入していた方であっても、後期高齢者医療制度に加入することになるのです。
したがって、健康保険の扶養に入っていた方についても、75歳になると後期高齢者医療制度に加入するために健康保険の扶養から抜けなければなりません。
2016年10月以降は被保険者の適用要件が拡大
被扶養者の条件については上記の通りですが、平成28年10月以降については注意しなければならないことがあります。
それは従業員数が501人以上の事業所については、健康保険の加入条件が拡大され短時間労働者であっても健康保険の被保険者に該当する可能性があるということです。
まずは平成28年10月の、適用拡大の条件について説明します。
平成28年10月以降健康保険に加入することになる短時間労働者の条件
- 厚生年金保険の被保険者数が501人以上の企業に勤めていること
- 週の所定労働時間が20時間以上であること
- 賃金の月額が8.8万円(年収106万円)以上であること
- 勤務期間が1年以上見込まれること
- 学生でないこと
この条件を満たしている場合には、今まで配偶者の扶養に入っていた方であっても、健康保険の被保険者になります。したがって健康保険の扶養から外れてしまうことになります。扶養から外れて、健康保険の被保険者になるということは、同時に厚生年金保険の被保険者になるということですから、健康保険や厚生年金保険の保険料が発生することになります。上記の条件を満たす配偶者がいる場合については要注意です。
平成28年10月から配偶者の勤務先で健康保険に加入する可能性がありますので、人事担当者としては事前に従業員から配偶者の状況について聴取し、届出もれがないようにしなければなりません。
まとめ
健康保険の扶養に関する質問を受けると、人事担当者として回答に困ることが多々あります。それは従業員の家族の収入や年金額について詳しく聞かなければわからないためです。また健康保険の扶養の制度が分かりにくいことも原因の一つでしょう。年金事務所に被扶養者異動届を提出したが、受理されなかった、ということがないように事前に従業員からしっかり必要事項を聞きとって、間違えのない手続きを行いましょう。